再生水で水稲栽培!秋田高専が酒造好適米を栽培し,特別限定醸造酒に!

秋田工業高等専門学校(秋田県秋田市 校長:植松 康 以下「秋田高専」)は,下水道資源を活用した水稲栽培手法の大規模実証試験を開始しました。生物処理や消毒を施された下水再生水(以下,再生水)は,窒素・リン・カリウムなどを含む安全で有用な資源ですが,その有効利用は進んでいません。そこで,化学肥料を使わずに再生水を肥料として酒造好適米を栽培し,特別限定醸造酒として付加価値を有する商品にすることで,地域資源循環型農業の構築に向けた取り組みを進めます。

生育調査の様子

生育調査の様子

【概要】
  • 30アールの実水田で,化学肥料を一切用いずに再生水で酒造好適米を栽培
  • 地元酒蔵とのコラボレーションにより特別純米吟醸酒を醸造
  • SDGsの達成:水資源の持続可能な管理,および持続可能な生産と消費のパターンの確保,に寄与する地域資源循環型農業を実現

研究内容について
 秋田高専では,地域の未活用資源である再生水の有効活用と,秋田の主要産業である水稲栽培・醸造産業に着目し,SDGsに貢献する地域資源循環型の水稲栽培手法の技術開発とその社会実装を目指しています。
 家庭などから発生する下水は,一般的に下水処理場に集められた後,微生物の力によって浄化され,消毒された再生水となります。再生水は安全性の基準を満たした上で,河川などに放流されます。一方で再生水には,窒素,リン,カリウムなど,農作物の栄養となる成分が含まれていますが,それらは未利用のまま放流されています。これらの成分は栄養塩と言われ,水中の濃度が上がりすぎると,アオコや赤潮のような植物プランクトンの異常増殖を引き起こします。そのため,必要に応じて下水処理場ではエネルギーをかけてこうした栄養塩の除去を行っています。
 そこで本研究では,浄化処理が施された安全な水である再生水に含まれる栄養塩を,農作物の代替肥料として活用し,SDGsの達成に寄与する地域資源循環型の水稲栽培手法の技術開発を進めています。これにより,下水処理の視点から見れば,栄養塩の除去に必要なエネルギーの削減をしながら,水環境の保全が可能になります。一方で農業の視点から見れば,外部からの肥料供給が不要となるため,自立型・地域資源循環型の農業構築が可能になります。つまり,下水道と農業の連携によりSDGsの水資源の持続可能な管理,および持続可能な生産と消費のパターンの確保,を通して,持続可能な社会の構築に寄与することが期待できます。

本取組のイメージ本取組のイメージ

 この取組は平成29年度から基礎的検討を開始し,令和2年度からは実水田における実証試験へと移行しました。令和3年度は30アール規模の水田に再生水を投入し,化学肥料を一切使わない酒造好適米の栽培を行いました。試験においては,慣行農法の水田との比較で,水稲の生育特性,玄米の品質,土壌・水質・温室効果ガス排出量への影響,生態系への影響などを含めた総合的な評価を目指しています。収穫した米は出羽鶴酒造株式会社とのコラボレーションにより,高専発の特別限定醸造酒としてのお披露目を予定しています(令和3年度末を予定)。

 本研究は,山形大学,秋田県立大学,九州大学との共同研究であり,秋田市,秋田県,株式会社日水コンおよび出羽鶴酒造株式会社の支援を受けて実施している産学官連携の取組です。活動を通して,学生は資源循環型社会の構築に向けた具体的な取組みに触れ,持続可能な技術開発に関する理解を深めます。さらに,第一次産業による地域発のイノベーションを推進することで,地域の活性化に貢献します。

特徴
 化学肥料を使わずに,地域産資源である再生水を活用して水稲を栽培します。また,酒造好適米を栽培し,清酒に醸造することで付加価値を高め,環境配慮型清酒としてのブランディングを目指します。

実証田の様子実証田の様子

再生水を導水再生水を導水

研究チーム
秋田工業高等専門学校創造システム工学科土木・建築系 准教授 増田周平
 研究室メンバー :創造システム工学科土木・建築系国土防災システムコース5年生 6名,専攻科環境システム工学専攻2年生 1名

研究室メンバー①研究室メンバー①

研究室メンバー②

引用元
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000116.000075419.html